はじめに、神様(かみさま)だけがいらっしゃって、ほかには、なにもなかったのです。なんにも……。
神様(かみさま)は、きれいな世界(せかい)を作(つく)って、そこに人間(にんげん)を住(す)まわ
せ、幸(しあわ)せに暮(く)らせるようにしてあげよう、と思(おも)われました。神様(かみさま)が
「光(ひかり)」とおっしゃると、光(ひかり)ができました。宇宙(うちゅう)とそのなかにあるもの
を、みんなお作(つく)りになりました。昼(ひる)を見守(みまも)る太陽(たいよう)と、夜(よる)も
見守(みまも)る月(つき)と星(ほし)。空(そら)を飛(と)ぶ鳥(とり)たち、海(うみ)を泳(およ)ぐ魚
(さかな)たち。森(もり)の木々(きぎ)とそこに住(す)む動物(どうぶつ)たち。四季(しき)の草花
(くさばな)や、小(ちい)さな虫(むし)たち。
みんな準備(じゅんび)してから、最後(さいご)に、ご自分(じぶん)に似(に)せて人間(にんげん)を
お作(つく)りになってのです。土(つち)で男(おとこ)の形(かたち)を作(つく)って、鼻(はな)から
神様(かみさま)の息(いき)を吹(ふ)き入(い)れられると、生(い)きた人(ひと)になりました。土
(つち)で作(つく)られた人(ひと)と言(い)う意味(いみ)の、アダム(あだむ)という名前(なまえ)
にしました。
アダムは神様(かみさま)がくださった素晴(すば)らしい世界(せかい)を見(み)て、そこにある
もの、一(ひと)つ一(ひと)つに名前(なまえ)をつけました。アダムは賢(かしこ)かったので、どれ
もこれもぴったりの名前(なまえ)でした。けれどもアダムは一人(ひとり)ぼっちでした。動物
(どうぶつ)たちはどんなに可愛(かわい)くても、一緒(いっしょ)に話(はな)したり、笑(わら)った
り、考(かんが)えをいいあったりする相手(あいて)ではなかったからです。
「アダムに相手(あいて)を作(つく)ってあげよう。」
神様(かみさま)は、アダムをぐっすり眠(ねむ)らせ、胸(むね)の骨(ほね)を一本(いっぽん)とっ
て、女(おんな)を作(つく)ってださいました。目(め)を覚(さ)ましたアダムは、女(おんな)を見(み)
て、思(おも)わずこう叫(さけ)びました。
「ああ、これこそ、わたしの体(からだ)でできたからだ。この人(ひと)は女(おんな)。エワと呼
(よ)んであげよう。子供(こども)たちのお母(かあ)さんになる人(ひと)だから。」
二人(ふたり)はとても幸せでした。二人(ふたり)が住(す)んでいる楽園(らくえん)には、四(よっ)
つの川(かわ)が豊(ゆた)かに流(なが)れ、おいしい実(じつ)のなるいろいろな木(き)が植(う)わって
いました。楽園(らくえん)の真(ま)ん中(なか)に生えているのは命(いのち)の木(き)です。その実
(じつ)を食(た)べるのは、いつまでも生(い)きるでしょう。けれども、そのそばにあるもう一本
(いっぽん)の木(き)をさして、神様(かみさま)はおっしゃいました。
「ご覧(らん)、この木(き)の実(み)だけは、とって食(た)べてはいけない。これは、知恵(ちえ)の
木(き)。食(た)べたら死(し)んでしまうよ。」
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